自己分析と就活について一考


就職活動における自己分析ってやつは本当にやっかいなもんですね。


一体どうやったら良いのか、自分ってなんだよ、そもそも自己分析って何?、する必要あるの?…etc。はてはて突き詰めるとプツンといってしまいそうですし。。(←今ぼくはここの状態!)就活生を困惑させるのには十分すぎるテーマのようです。


そんな自己分析と就活について最近考えたことがあるので少し。ここではその困惑を晴らしてみることに試みたいと思います。



そもそも企業は「本当のあなた」を求めているわけではない。ここで言う「本当のあなた」とは、少し堅い話になりますが、社会心理学者ミードの言う所の「主我=I」つまり、「アイデンティティ」としての私です。
どうか「んん…?」と思わずに。要するに、人は生まれた時から社会における「役割」を学習し、社会関係に合わせて自分を変化させるもの。例えば、目上の人と会う時は例え普段ふまじめだとしても丁寧に接しなければならないでしょうし、サークルにいる時は盛り上げ役になるかもしれない。そうした「客我=me」つまり、「キャラ」に対して、それを統一的に把握する主体が「I=アイデンティティ」なわけです。場面場面に合わせて自分は「me=キャラ」を発揮するけれども、それを俯瞰的に見つめコトロールする「I=アイデンティティ」が存在するということです。



そして企業は「アイデンティティ」ではなく、「キャラ」を求めている。もう少し話を進めます。

企業とは社会です。その社会を生きる中では、人は社会関係の中で築かれた自分を表現せざるをえません。例えば、あるプロジェクトを任せられた時にあなたは主体的にふるまう必要があるかもしれませんし、的確なサポート役として振る舞わなければならないかもしれない。企業が社会である以上は当然、社会の中で期待される役割としてのあなた、つまり「me=キャラ」が求められるというわけです。


さて、企業のESの中では自分に関するエピソードが求められることが多々あります。これはこれまで述べてきたことを考えると当然の帰結だと言えます。なぜなら、あなたの「me=キャラ」を示すものこそがエピソードといえるからです。エピソードとは、あなたの社会関係の中で築かれた自分を示す物語のことです。例えば、ある集団の中であなたはどのように振る舞えるのか、あるシチュエーションの下ではどういう態度を取るのか…など。そのように、社会における自分=キャラを効果的に伝えるためにはエピソードという物語を語る/語らせることがよりよい方法だといえます。それゆえに企業はあなたのエピソードという物語を求めているわけです。



ここから少し考えを加速させます。
では、そんな「キャラ」は「本当の自分」ではないのでしょうか。社会の中で築かれたある種の虚像は自分ではなく、「キャラ」としての自分は「アイデンティティ」としての自分との乖離があるのだと。
しかし、現代ではそうした感性は弱体化しているようです。サークルにおける自分、バイトにおける自分、学校での自分…。それらの自分は全てその場面場面ごとの本当の自分なのではないでしょうか?「本当の自分」と言うと少し混乱するかもしれません。たとえ、演じられた自分だったとしても(会社で得意先にへこへこしている自分だとしても)そう振る舞う自分はまぎれもなくあなたそのものと言えはしないでしょうか。


社会が流動化し、(ネットが登場し)以前とは異なり、いくつものコミュニティができている現代ではそのコミュニティ=社会関係ごとにいくつもの「自分=me=キャラ」が存在しているといえます。そのいくつもの「me=キャラ」の集合体こそが「本当の自分」であると現代では感じられている。安定した統一的なコミュニティが消えつつある以上は一定のアイデンティティを保つことは難しく、キャラを本当の自分として立てていくしかない。そのような状況では「主我=アイデンティティ」はもはや存在せず、場面場面に応じて臨機応変にキャラとしての自分を使い分け、その自分の間の矛盾をやりすごす感性こそが求められている。…そんなことが昨今の社会学では論じられているようです。(少し言葉を登場させると、社会が流動化した再帰的近代における自己像はアイデンティティが弱体化し、meに対して「反省」ではなく「再帰」のメカニズムが存在しているということです)



まあそんな現代ではキャラとしての自分と企業が求めるキャラとしてのあなたをマッチングさせることが必要であり、それこそが今の就活であるといえるのかもしれませんね。


以上の少々駆け足だった議論を示したのが以下の図です。(手書き!!)






図が汚いせいで逆にわかりにくいかもしれませんが…。こんな概念図が自己と就活の間には成り立つのではないかなと思います。

もう少し付け加えることがありそうな気がしますが。だいぶ筆が滑りがちなのでこのあたりで止めておきます。


就活ではアイデンティティにまで踏み込む必要はない。必要なのは関係のネットワークの中で築かれたキャラであり、積み重ねてきたエピソードがそれを示してくれる。自分の言っていることがズレている可能性は大いにありますが、こうした整理を背景にして就活をしないと路頭に迷ってしまうような気もします。よりどころは人それぞれですが、ぼくの場合はこれがそれなのです。