ツーリスト

ツーリスト [DVD]

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イタリアを訪れたアメリカ人旅行者フランクが、謎の美女エリーズに翻弄され、知らないうちに巨大な事件に巻き込まれていく物語。


偶然出会った男女二人が恋に落ち、お互いを守り敵に命の危険を晒されながらも共に困難を乗り越える。そんなプロット自体はよく見られるもの。元々作品自体がフランス映画『アントニー・ジマー』(2005)の忠実なリメイクだとかで。ストーリー自体に特筆する目新しさは正直ない。


そうして変わり映えの無いストーリーが引き算された時、ではこの映画に何が残っていたのかというと。やっぱりアンジェリーナ・ジョリーとジョニーデップの2大スター競演に尽きる。


「世界が夢見た豪華競演 ついに実現!」
「ナンバーワン男女優が夢の初競演!」


そんなコピーが映画の告知・広告に踊っていたように、良くも悪くもこの映画はその二人の魅力が打ち出され、かつそれに依存しきったもの。二人のやりとりの様子が強く印象に残るように、物語がどんどん二人に引っ張られていく。物語よりもキャラクターの方が強い。そんなことを感じさせられた。


さて、映画にストーリーの引き算が行われた時、もう一つ残るものが撮影された舞台のベネチア。スクリーンいっぱいに映された豪華な町並みに、ベネチアの水路を生かした水上のアクション。街の魅力を存分に生かしたシーンの数々はアンジーとジョニーの魅力を倍増させていた。


まさに、この映画は「[アンジー+ジョニー]×ベネチア」というような固有名詞の魅力を足してかけ合わせた作品。そして、えてしてそうした固有名詞に依存した作品には何も残らないもの。それゆえ、エンタメ映画以上の意味を読み込めるのかということは疑問。


でも、その2大スターがベネチアを舞台にするというまさに「豪華×豪華」で。ひたすらにそのゴージャスさを追求した映像は良かった。美男美女に、美しい町並み。


この映画の「評価」というものは、(おそらく多くの人がそうであるように)初めからエンタメ映画として見た時、その豪華さを楽しめるのかどうか、見るに値するのかどうかという所に発生するのだと。


んで自分自身はそこを楽しむことができた。(そしてベネチアに行きたくなった!)ストーリーが凡庸だったわりに、わりといい気分で映画館を後にできたのはそれゆえだったような。